SAPマイグレーションにおけるコンバージョンと再構築の違い

SAPマイグレーションにおいて、現行システムから新システムを導入する際どのような手段で導入するか迷うことになるでしょう。主な選択肢としては「コンバージョン」・「再構築(リビルド)」などがあります。これらの中から「コスト」「時間」などさまざまな要因を元に検討しどのような形で導入するか決定することになると思います。今回は導入手段のひとつである「コンバージョン」・「再構築(リビルド)」の違いについて解説します。

SAPマイグレーションの背景

マイグレーションを検討する背景としては「SAPサポート期間の終了」と「現行システム(環境)の整備」が挙げられます。

まず「SAPサポート期間の終了」ついては、多くのユーザが現在直面しているのがSAP ECC 6.0の保守サポート期限の終了である「2025年問題」です。

実際サポート期間は2年延長されたため、少し余裕ができたものの、これをきっかけにマイグレーションの検討をするユーザも多いでしょう。

もう一つは「現行システム(環境)の整備」ですが、こちらは現在使用中のシステムに対してなにか改善点がみられる際に検討されることが多いでしょう。

それぞれの背景を元にマイグレーションが検討されますが、それぞれマイグレーションの選択肢として最適なものはあるのでしょうか?

SAPマイグレーションの選択肢の違い

SAPマイグレーションの選択肢としては「コンバージョン」・「再構築(リビルド)」などがあります。ではそれぞれにどのような特色があるのかについて説明します。

まず「コンバージョン」について説明します。

「コンバージョン」は、現行システム(SAP ECC 6.0)の環境で使用しているカスタマイズ設定やアドオンプログラムなどの資産を有効活用しながら新システム(SAP S/4HANA)の環境に引き継いだ形で移行する手段です。

そのため、現行の業務フローやオペレーションの変更があまりみられない場合にとても有効な手段となっています。もし変更があった場合でも変更点に関する範囲の修正が可能です。

また、これまでの業務において蓄積してきたデータもすべて新システムに移行して使用することができます。移行したデータを新システムで使用してデータ分析などの利用も可能です。

作業自体もSAPが提供する標準のツールなどを使用して行います。

そのため「コスト」や「工数」という観点から考えてとても有効な手段と思われます。

注意点としては、SAP S/4HANA化によって一部テーブルの構造に変更があるためその点については一部修正などの対応が必要となっています。またアドオンプログラムについても同じように対応が必要な場合があります。

それはSAP S/4HANAの高速データ処理を利用するためです。従来の命令文のままではSAP S/4HANAの高速データ処理が利用できないため、SAP S/4HANAの高速データ処理に対応した命令文の修正が発生します。

もちろんSAP S/4HANAの高速データ処理を利用しないのであればこれらの処理は発生しませんが、せっかくの素晴らしい機能なので使わない選択肢はないように思います。

とはいえ、テーブル構造もアドオンプログラムも一部の変更に対しての調整ですが対象のボリュームによっては思った以上に「コスト」や「工数」を必要とする可能性もあるので改めての検討が重要となります。

次に「再構築(リビルド)」です。「再構築(リビルド)」は現行システム(SAP ECC 6.0)の環境からは必要とするデータのみを利用します。それ以外はカスタマイズ設定やアドオンプログラムなどのこれまで使用していた資産をゼロにし新規として新システム(SAP S/4HANA)を導入する手段です。

これまでの業務において蓄積してきたデータも新システムにはそのまま移行しません。新システムでは過去データを使用してのデータ分析などもできなくなります。

また現行システムで使用していたアドオンプログラムも使用できません。SAP標準機能のみで対応するということも可能でしょうがSAP標準機能だけでは対応できない場合は新規のアドオンプログラム開発が必要となるため「コスト」と「工数」が大きくかかることになるでしょう。

これらの理由から「再構築(リビルド)」は、「コスト」や「工数」という観点から考えてあまり効率的な手段とは思いません。

しかし、まったく新規で導入するということはSAPのベストプラクティスベースでの再構築が可能な状態でもあります。そのため、現行の業務フローやオペレーションの見直しも含め新規導入に併せての業務改善を実施する機会にもなります。

SAPマイグレーション すべての選択肢 大全集

SAPマイグレーションにおけるコンバージョンと再構築のメリットとデメリット

ここまで「コンバージョン」と「再構築(リビルド)」のそれぞれの特色を説明しました。

次にそれぞれの特色をもとにメリットとデメリットについて説明します。

【コンバージョンのメリット】

「コンバージョン」のメリットは、「再構築(リビルド)」にくらべて「コスト」と「工数」を削減できるということがまず一番にあげられる点です。

また現行のシステムからデータやアドオンプログラム、カスタマイズ設定などを引き継いでいるため移行後のユーザ業務への影響が少なく負担もかからないようになっています。

さらに、作業もSAPが提供する標準のツールなどを使用して行いますので新規導入によって発生するようなリスクも少なくなっています。このような理由からSAP S/4HANAへのバージョンアップを検討しているお客様が「コンバージョン」を採用することが多いです。

【コンバージョンのデメリット】

     次に「コンバージョン」のデメリットについても説明します。

デメリットは、現行のシステムからデータやアドオンプログラム、カスタマイズ設定などを引き継いでいるためせっかく新しいシステム(SAP S/4HANA)を導入してもSAP S/4HANAの最新の機能を十分に活かすことができない点です。SAP S/4HANAの新機能のひとつである高速データ処理を利用することができません。もちろん現行システムより引き継いだアドオンプログラムを修正することで高速データ処理を利用できますが修正しなければ新しいシステム(SAP S/4HANA)を導入しても目に見えたパフォーマンスの向上を実感することができません。この点は経営陣へのアピールにおいてマイナスとなるかもしれませんね。

【再構築(リビルド)のメリット】

一方で「再構築(リビルド)」のメリットは、何と言ってもSAP S/4HANAの新機能を利用できるということです。SAP S/4HANAの機能のひとつである高速データ処理を利用することができるので、パフォーマンスの向上を存分に実感できることになるでしょう。これだけで導入を検討している経営陣へのアピールにもつながるとおもいます。

【再構築(リビルド)のデメリット】

次に再構築(リビルド)のデメリットについてもご説明します。ズバリ、デメリットは「コスト」を「工数」になります。現行システムより一部は引き継ぐことができるとはいえ基本的には新規導入と同じような作業が見込まれています。また、新規導入に近いということは「コンバージョン」に比べるとリスクも増えます。

また導入後ですが、ユーザ業務にも影響が発生するためユーザの負担も増える可能性があります。しかしこの点については業務フローやオペレーションの見直しを図ることで、業務の効率化にもつながるため、メリット・デメリット両方の要素を含んでいるように思われます。

SAPマイグレーションにおける再構築の違い まとめ

ここまで説明したとおり「コンバージョン」「再構築(リビルド)」いずれにもメリット・デメリットがありどちらを採用するかについては要検討が必要になると思います。

「2025年問題」を意識したケースであれば「コスト」「工数」を抑えることもできる「コンバージョン」がいいように思いますし、業務改革を考えているのであれば「再構築(リビルド)」もいいのではないでしょうか。

ただせっかく新システム(SAP S/4HANA)を導入するのであれば新機能を存分に使って、日々の業務においてより良いパフォーマンスを体感したいものです。

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