SAPマイグレーションの新たな選択肢 BLUEFIELD™(ブルーフィールド)アプローチとは?

SAPをS/4HANAへマイグレーションしたいが、準備が大変で時間もコストもかかるから実施に踏み切れない」、「バージョンアップしても導入前と現在の業務プロセスや組織構造が合わないからメリットが感じられない」、「かといって新規導入し直すのも大変・・・」、そんな悩みを抱えるSAPユーザーは多いのではないでしょうか。本記事ではSAP移行の課題を解決しつつ、SAP移行に関する人的、時間的、金銭的コストを削減するSAPマイグレーションの新たな選択肢BLUEFIELDTMアプローチについて解説します。

SAPマイグレーション手法 BLUEFIELDTM(ブルーフィールド)アプローチとは?

BLUEFIELDTMアプローチとは、ドイツのSchneider-Neureither & Partner SE(以下SNP)が25年/12,500プロジェクトに及ぶ経験を基に作り上げたSAPマイグレーション手法です。

SNPはSAPのゴールドパートナーであるとともに、SAP S/4HANA® Selective Data Transition EngagementというS/4HANAのデータ移行エキスパートのコミュニティに加盟しています。

パソナテックはSNPとパートナー契約を締結しています。

BLUEFIELDTMアプローチではSNPが開発したCrystalBridge®というツールを活用することで、主に以下のメリットを享受することができます。

  • 自社の保有するSAP環境に対する自動分析を短期間で実施
  • 必要なデータだけを移行し、データ量を削減することで運用コストを最適化
  • 移行時に組織構造の統廃合や切り離しを行い、最新の業務プロセスに適応した運用を実現
  • 移行作業中はお客様の個人情報など機密性の高いデータをマスキングし保護
  • 移行時のダウンタイムを従来の手法よりも大幅に削減。最短でほぼゼロにすることが可能
  • 新総勘定元帳(New-GL)の有効化やUnicode変換などS/4HANAへの移行要件に完全対応
  • クラウド環境への移行が容易

既存のSAPマイグレーション手法と徹底比較!BLUEFIELDTMアプローチはどこが違う?

BLUEFIELDTMアプローチの簡単な概要を紹介しましたが、SAPが標準で提供する従来のS/4HANA移行アプローチと比較しながら詳しく掘り下げてみましょう。

まずはS/4HANAをゼロから再構築するGreenfield(グリーンフィールド)アプローチについてです。

現在のビジネスプロセスに沿ったシステムを構築し直すことができるのがメリットです。一方、今までのデータは移行できないため別の方法で管理する必要があります。また、カスタマイズ機能を再開発したり、正常に稼働するためのテストを綿密に計画・実施したりと、導入にかかる時間的・金銭的コストは1番高いと言えるでしょう。

次に既存システムの全データをS/4HANAへ移行するBrownfield(ブラウンフィールド)アプローチについてです。

現行システムのデータを保持したままS/4HANAを利用することができますが、現在は使用していないアドオンや大昔の履歴などの不要なデータも引き継がれてしまいます。そのため、HANAの利点であるインメモリデータベースの高速性を活かすことができません。現行システムをS/4HANAで再現するに留まり、技術的なアップグレード要素がないため、高額な移行費用に見合うリターンが得られるかは懸念が残るところです。

では、BLUEFIELDTMは上記の2種と何が違うのでしょうか?

BLUEFIELDTMアプローチの特徴は、データを選択的に移行することでGreenfield(0からの再構築)とBrownfield(既存システムのコンバージョン)の’いいとこ取り’をしている点にあります。

つまり、業務プロセスの最新状況に合わせてシステムを構築し直すことができるうえ、必要な過去のデータを過不足なく移行できます。よって今までのERPに蓄積したデータをS/4HANAで最大限に活用することが可能になります。

このようにたくさんのメリットがあるBLUEFIELDTMアプローチですが、実際にはどのようにしてこれらのアドバンテージを実現するのでしょうか。次章では移行の流れについて見ていきましょう。

SAPマイグレーション すべての選択肢 大全集

BLUEFIELDTMの選択的データ移行はどのように行われる?

BLUEFIELDTMアプローチのプロセスは、簡単にまとめると以下のような流れで行われます。

 ①自社のSAP ECC環境に対して自動分析を実施

 ②分析結果をもとに、ECC環境からデータの入っていない空のシステムコピーを作成

 ③空のシステムコピーをHANAにバージョンアップし、ECCから必要なデータを移行する

 ④データをS/4向けに変換して検証・動作確認し、稼働開始

ひとつずつ、もう少し掘り下げていきましょう。

①自社のSAP ECC環境に対して自動分析を行う

SNPの提供する分析用アドオンを自社のSAP環境にインストールして、分析ファイルを取得します。取得したファイルをSNPのCrystalBridge®にアップロードすると、例えば以下のような分析結果を得ることが可能です。

  • 企業の地理的・階層的な構造や管理領域、購買組織の使用状況を様々な形式で視覚化
  • マスタやトランザクションの使用状況をモジュール単位で把握
  • Unicode対応や新総勘定元帳の導入実施の有無を確認
  • 複数のシステム間でマスタデータを比較し、重複・類似するデータからゴールデンレコードを構築
  • クライアント間でカスタマイズテーブルの内容を比較・分析し、移行への関連度が高いカスタマイズを特定
  • 複数のSAPシステムの番号範囲を比較し、再番号付けが必要な重複する番号範囲を表示することにより、潜在的な競合を識別
  • ハードコーディングされた値や廃止された汎用モジュールを識別し、移行プロジェクトに影響を及ぼす箇所を特定

このように、CrystalBridge®による分析は、プロジェクト規模を測るようなマクロの情報や、移行に必要な細部の要件策定に使用するようなミクロの情報を短時間で提供します。これらの分析情報を基にデータをどのように移行するかのルールを策定することが、S/4HANAへの選択的データ移行を実現するための肝になります。

②分析結果をもとに、ECC環境からデータの入っていない空のシステムコピーを作成

アプリケーションデータを除き、リポジトリやSAP標準クライアント、カスタマイジング情報などの必要なデータのみをコピーします。少々特殊な手法に聞こえますが、このプロセスの大きな利点は、移行先のシステムを準備する際にかかる時間的および金銭的コストを削減できる点にあります。

移行元ECCシステムの容量が10TBあるケースを例に、通常との違いを見てみましょう。

通常の手段でコピーを作成する場合、移行先には同様に10TBの容量をもつシステムを準備する必要があり、稼働前なのに膨大な所有コストがかかってしまいます。また、コピー作業自体にも1週間以上かかることが予想されます。

一方、空のコピーを作成する手法であれば用意する移行先システムの容量は200GB程度で済み、コピー作業もわずか6時間程度で完了することができます。

③空のシステムコピーをS/4HANAにバージョンアップし、ECCから必要なデータを移行する

データの移行に際し、分析時に策定した移行ルールの設定や移行元からのデータエクスポート、移行先へのデータインポートはコントロールシステムを介して行われます。

RFC接続を介して移行元と移行先とコントロールシステムを結び、移行に必要な手順をガイドラインに沿って1つずつ進めていきます。これらの手順は必ずチェックを挟みながら進行するため、作業の実施漏れや、作業に失敗したまま次に進んでしまうことはありません。

いくつかのプロセスを実施&チェックして移行ルールの設定が完了したら、移行元のデータがファイルシステムへエクスポートされ、その後ファイルシステムから移行先へインポートされます。このデータ移行はバックアップを取りながら何度でもロールバック可能なため、必要な箇所に必要なデータが移行されているか確認しながら作業を進めることができます。

④データをS/4向けに変換して検証・動作確認し、稼働開始

移行先のS/4HANAへデータのインポートが完了したら、財務会計やロジスティクス、ビジネスパートナーといったデータのS/4コンバージョンを実施します。この作業は、実行前のシミュレーションによってあらかじめ不整合やエラーを検知し解決することができます。また、③と同様に決められたプロセスに則るため、S/4HANAを使用するうえで必須の項目(品目元帳の有効化や新総勘定元帳への移行など)に漏れなく対応できます。

データの移行と変換が完了したら、自動テストによる変換結果の検証を実施します。モジュールまたはオブジェクト単位でチェックを行い、例えば必須入力の項目に値が入っていない等の場合にエラーメッセージを表示します。このようにデータの分析、移行、検証、修正の一連の流れを繰り返し行いデータの品質を高めた後、お客様によるビジネスプロセステストが完了すれば、BLUEFIELDTMアプローチによるS/4HANAへのマイグレーションは完了となります。

まとめ

SAP S/4HANAへのマイグレーション第三の選択肢「BLUEFIELDTMアプローチ」の特徴と従来の手段との比較、移行プロセスについて解説しました。詳細まではお伝えしきれなかった部分もありますが、S/4HANAへの移行を検討している皆様の一助になれば幸いです。

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