SAP S/4HANAとECCの違いとは?変わったポイントを解説

SAPでは要件に応じてさまざまな製品が提供されていますが、代表的なものとしてSAP S/4HANA、ECCが挙げられます。ECCユーザーはSAP S/4HANAがどのようなもので、何ができるのか知りたいかと思います。本記事ではSAP S/4HANAとECCの違いや特徴、変わったポイントについて解説していきます。

SAP ECCとは?

まずSAP ECCですが、こちらはSAP R/3と呼ばれるERPパッケージ製品が元になっています。

SAP最初の製品であるR/1やその後継製品であるR/2は、大企業や官公庁で用いられるメインフレームで動作するアプリケーションでした。続くR/3は、UNIX系やWindowsなどのオープンシステム向けに開発された製品です。

当時は企業へのコンピュータ普及が急激に進んでおり、マルチプラットフォーム対応のR/3は多くの企業に採用されました。R/3によって、SAPはERPパッケージ製品の代名詞とも言える地位を確立したのです。     

R/3はその後、CRM(顧客関係管理)、SCM(サプライチェーン管理)、PLM(プロダクト・ライフサイクル管理)、SRM(サプライヤ関係管理)の各ソリューションの製品を含めた、アプリケーションスイートとして販売されました。このうちR/3に相当する部分のことをSAP ERP、もしくはSAP ECC と呼んでいます。SAP ECCとは「SAP ERP Central Component」の略称です。

尚、ECCはバージョン6.0を最後に、既に提供を終了しており、その保守サポートも2027年末の終了を予定しています。近年盛んに言われている「2027年問題」とは、このことを指しています。

SAP S/4HANAとは?

一方のSAP S/4HANAは、2015年に提供開始された、SAP ECCの後継製品です。SはSimple、4は第4世代、そしてHANAはSAPが提供しているデータベース「SAP HANA」をそれぞれ表しています。

SAPはS/4HANAを「企業にイノベーションと変革をもたらすためのプラットフォーム」として位置づけており、圧倒的な処理スピードと直感的なユーザーエクスペリエンスを特徴としています。

S/4HANAは、現行ではSAPのERPパッケージ製品の最新のバージョンです。

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SAP S/4HANAで何が変わったか

それではSAP ECCとS/4HANAでは、何が変わったのでしょうか。

代表的な変更点を3つご紹介します。

1つ目は、S/4HANAでは使用できるデータベースがSAP HANAのみになったことです。

ECCでは、システムで使用するデータベースをユーザーが自由に選ぶことができました。たとえば、Oracle社のOracle DatabaseやMicrosoft社のSQLServerなどです。

しかしS/4HANAでは、SAP HANAしか使用することができません。そこだけをきくとデメリットのように感じられますが、もちろんメリットがあります。メリットを3つご紹介いたします。

最大のメリットは、処理の高速化です。

SAP HANAはインメモリデータベースで構築されており、データをSSDやHDDなどのストレージに書き込むのではなくメインメモリに書き込みます。これには、処理の高速化を実現できるという特徴があります。通常の業務プロセスの領域だけでなく、AIや機械学習などのアナリティクスの領域にも効果を上げます。

また、データベースに関していえば、新たにBPマスターというテーブルができたことは特記すべき点です。

これまで仕入先マスター、得意先マスターと個別に管理されていたものが、BPマスターとして一元管理されるようになりました。そのためECCからS/4HANAへのマイグレーションの際には、各個別マスターをBPマスターに紐付ける必要があります。

2つ目の変更点は、SAP Fioriという新たなユーザーインターフェースが追加されたことです。

ECCでは、SAP GUIというアプリケーションソフトを起動してSAPを利用するのが通常でした。

S/4HANAではSAP GUIのほかに、SAP Fiori というインターフェースも利用できるようになりました。こちらは画面がWebベースで作成されているので、アプリケーションのインストールの必要がなく、タブレットやスマートフォンでの利用が可能です。

また、SAP Fioriは「機能中心からユーザー中心へのシフト」というコンセプトを

掲げています。これは、業務プロセスを把握し最後に画面設計を行うというこれまでの開発手順ではなく、最初に業務の手順に沿って画面設計を行い、各画面に対して必要な機能を組み合わせていくという考え方です。SAP Fioriを実際に利用してみると、直感的でわかりやすいデザインに驚く方も多いかと思います。

3つ目の変更点は、システムの提供形態にクラウドが追加されたことです。

ECCでは提供形態はオンプレミスのみでしたが、S/4HANAではクラウド(SaaS)での提供も可能になりました。クラウドの場合は、SAP S/4HANA Cloudと呼ばれます。

オンプレミスとS/4HANA Cloudの違いですが、SAP S/4HANA Cloudは標準的な業務プロセスを対象としてソリューションが提供されており、カスタマイズ拡張した業務プロセスを対象とする場合にはオンプレミスを選ぶのが基本となります(ただし、S/4HANA Cloudには拡張機能に対応したエディションもあります)。またアップデートの頻度にも違いがあり、オンプレミスは一年に一度、大規模なアップデートが行われていますが、S/4HANA Cloudは約三カ月に一度のアップデートと、その間隔が短くなっています。

まとめ

本記事ではSAP ECCとSAP S/4HANAの違いと、変わったポイントについて解説しました。

SAP ECCはSAP ERP の別称であり、R/3を系譜としている

SAP S/4HANA はSAP ECCの後継製品で、現行の最新バージョン

また、SAP ECCからSAP S/4HANAへの変更点は以下があります。

SAP HANA採用によるデータ処理高速化

SAP Fioriというユーザー中心設計への転換

オンプレミス型、クラウド型、ハイブリッド型と多様な提供形態

現在、多くの企業でECCを利用されています。しかし、本文で解説したとおり、ECCの保守サポートは2027年までを予定しているので、それまでにS/4HANAへマイグレーションすることが求められています。

S/4HANAはメリットがたくさんあります。しかしECCとはシステム構成などが大きく変わっているので、マイグレーションへ慎重になっている企業も多いかと思います。

マイグレーションを実施する前に、まず大切なことは、ECCとS/4HANAの違いを把握することではないでしょうか。本記事がその一助となっていれば幸いです。

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