SAP HANAの管理および開発に欠かせない「SAP HANA studio」とはどのようなツールなのか。「SAP HANA studio」でできること、またSAP 移行後、SAP HANAの管理や開発はどう変わるのかについて解説します。
SAP HANA studio とは
SAP HANA studioは、SAP HANA用のEclipseベースの管理ツールです。SAP Support Portal よりSAP HANA studioをダウンロードしインストール、もしくは「SAP HANA Tools for Eclipse」プラグインをインストールしたEclipseする二つの利用方法があります。OSはWindows、Linux、macなどがサポートされており、SAP HANAに接続するときは、SAP HANAのホスト名やインスタンス番号、認証のためのユーザー名やパスワードを準備します。
また、SAP HANA studioではSAP HANAデータベースの管理、ユーザー認証の作成と管理、データの新規作成または既存モデルの変更や各種アプリケーションの開発などを行うことができます。
SAP HANA StudioとSAP HANA Tools for Eclipseの違い
SAP HANA StudioとSAP HANA Tools for Eclipseとの間に大きな違いはありません。インストールプロセスが異なることと、起動アイコン、タイトルバー、ダイアログなどいくつかのアイテムに違いがありますが操作した結果は同じです。
そのため、Java開発などを行う際にEclipseをすでにインストールしている場合はプラグインをインストールして使用できます(HANA用に個別のIDEは必要ありません)。開発ツールを使用してない場合は標準のHANA Studioインストーラーとより使いやすい方法を選択することができます。
SAP HANA studioでできること
SAP HANA studioはインストールに応じて、すべての機能または特定の機能のみがサポートされます。インストールもしくは更新時に以下機能を追加することができます。
「SAP HANA Studioの管理」
さまざまな管理タスク用のツールセットです。トレース、カタログブラウザ、SQLコンソールなどの一般的なトラブルシューティングツールを含みます。
「SAP HANA Studioデータベース開発」
コンテンツ開発用のツールセットです。SAP HANAネイティブアプリケーション開発(XS)を含まないSAPHANAシナリオでのDataMartsとABAPに対応しています。
「SAP HANA Studioアプリケーション開発」
SAP HANAネイティブアプリケーションを開発するためのツールセット(XSおよびUI5ツール)。SAPUI5ツールは含まれていません。
※デフォルトインストールでは上記すべての機能がインストールされます。
今回SAP HANA studio管理機能の一部を紹介します。
- SAP HANA の管理
- サービスの開始及び停止
- リソース管理
- システムの監視
- ユーザー管理
- バックアップ・リストア
- データプロビジョニング
- SQLの実行
「SQL Console」というSQLエディタよりSAP HANAへSQLクエリを実行することができます。複数DBへのSQL実行も可能で、クエリ結果はクリップボードやファイル形式などで保存することもできます。
- ビューの作成
- レポート作成
SAP HANA studioから参照したビューは「Analysis」という機能を使い、指標と目的に合ったグラフを選択するとビジュアライズ化することができます。BIツールほど多機能ではありませんが簡単な可視化を実現できます。
SAP HANA studioの今後
SAP HANA studioは今後SAP HANA Extended ServicesAdvanced (XS Advanced)およびSAP HANA cockpitに置き換えられます。
いずれもSAP HANA studioの後継となり、XS Advancedは開発ツール、SAP HANA cockpitは、SAPHANAの管理ツールとして利用します。どちらもSAP HANA studioとは異なり Webベースとなります。XS Advancedは拡張機能を備えたCloud FoundryオープンソースのPlatform-as-a-Service(PaaS)です。SAP Cloud Platform、Cloud Foundryランタイムを介してサポートされており、SAPHANAデータモデルのライフサイクル管理およびSAPHANAアプリケーション開発に推奨されるツールです。開発者ツールはSAP Web IDEを介して提供されます。
SAP HANA cockpitはFioriベースのLaunchpadを備えています。そのため使い方はSAP Fioriと似ています。SAP HANA cockpitは管理ツールなので、以下の機能を提供しています
- モニタリング(アラート、リソース使用量、およびデータベースのパフォーマンスを監視など)
- システムのプロパティとアラートの構成
- 分析と診断(トレースファイルと診断ファイルを分析し、システムビューをクエリする)
- パフォーマンスの最適化(パフォーマンスモニター、ワークロードアナライザー)
- セキュリティ(ユーザー管理、監視、監査)
SAP HANA Studioは、HANA 1.0 SPS12にて開発が終了しました。HANA 2.0でも引き続き利用可能ですが、XS Advanced開発を含む多数のSAPHANA2.0機能用のツールに対応していません。これは、SAP HANA Tools for Eclipseも同様です。SAPHANA2.0機能に対する管理や開発を行う場合は上記ツールに切り替える必要があります。
まとめ
SAP HANA Studioは単なるSAP HANAの管理ツールではなく、開発ツールでもあります。管理から開発までを一つのツールで行えることは魅力的ですが、一方で万が一のオペレーションミスを考えるとSAP HANA cockpitとXS Advancedに分かれて安心している部分もあります。
SAP HANA cockpit はHANA2.0システムとHANASPS12システムの両方にアクセスできる他、包括的な管理機能を備えているため、移行や管理を踏まえると新しいツールを試してみるのはいかがでしょうか?
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