SAP S/4HANAのアドオン開発における「やってはいけないこと」とは?

SAP導入PJにおいて、避けては通れないのがアドオンの開発です。

どのようなお客様向けであってもアドオン開発が無いというケースはあまり無く、対応が求められるケースが大半です。

しかし、アドオンの開発は大きなリスクも抱えており、PJ自体の成否を左右することも珍しくありません。そのリスクと回避方法について解説します。

SAPにおけるアドオン開発とは?

SAPのアドオンとは、SAP標準の機能には備わっていない機能を、顧客要件に従って開発することをいいます。ERPパッケージは基本的に業務全体を最適化するものとして設計されており、SAPもシステムに合わせて業務設計を変更することを推奨してはいます。しかし現実問題として全ての業務をシステムに合わせて再設計することは非常に困難です。そのため、大部分のSAP導入・移行PJでは、アドオン開発を行ってシステム側を変更する必要に迫られます。

SAP HANAアドオン開発の代表的な例

以下に代表的なSAP HANAアドオンの例を挙げます。

  • レポート

一般的に「レポート」というと報告書などのことを意味しますが、SAPのアドオン開発に用いる言語(ABAPと呼ばれる独自言語です)においては別の意味を持ち、「データを出力するための機能」ということになります。画面上に一覧で情報を表示するだけでなく、ファイルを出力してダウンロードするといった機能も含まれます。

データの照会や取得といった業務の中心的な役割を担う機能であり、またお客様企業によって違いが出やすいところでもあるので、アドオンが必要とされる最も代表的な一例といえるでしょう。

  • バッチ処理

SAP以外のシステムでもよく使用される、定期的に一括でデータを処理する機能です。(例:毎日夜間にその日の売上データを集計してレポートを作成する、など)

システムで操作を行ったタイミングでデータに反映される「リアルタイム処理」と違い、結果が出るまでにタイムラグが発生してしまうというデメリットはあります。しかしメリットとして、リアルタイム処理では時間が掛かってしまうような大量の件数を処理することが可能なこと、作業が必要なく、リアルタイムで行うことが出来ます。

SAP HANAアドオン開発の大きなリスク

お客様企業の要望を実現する上で大きな武器であるSAP HANAアドオン開発ですが、しかしSAP関連のPJにおいては、大きなリスク要因ともなってしまっているのが現状です。

これには以下のような原因が挙げられます。

  1. お客様の要望が大きく膨らみやすい

ERPパッケージは基本的に業務をシステムに合わせる形を想定して設計されている、というのは前述した通りですが、いざ実際にSAPを導入する段になると、どうしても現行業務を優先してしまいがちになるのが現実です。特にSAPは日本のフルスクラッチの業務システムに比べるとシステム設計上の思想が異なる場合が多く、あれも必要、これも変えなきゃ……と、半ばパニックのようにアドオン開発の必要性を判断してしまうケースも見受けられます。

  1. 不具合の危険性が高い

SAPの標準機能は十分に検証が行われており、業務に影響のある不具合を検知してしまうことはほぼ有りません。しかし、アドオンは当然新規で開発することになり、他の標準機能との整合性なども求められるため、不具合が発生するリスクが標準機能に比べて非常に高くなります。そのため、PJ内での検証の工数を大きく取る必要性が出てくるでしょう。

  1. コストが高く、影響が大きい

アドオン開発を行うと、初回の開発時だけでなく、その後のSAP関連PJのコストが上昇することは必ず念頭に置いておく必要が有ります。リリース後の運用時にもそのアドオンをメンテナンスすることが出来る体制を維持しておく必要が有り、システム担当の負荷が上昇します。

また、特に近年大きく問題になっているのが、SAP ECCからSAP S/4HANAにマイグレーションする際の膨大なコストです。アドオンは当然ECC向けに作成されているため、S/4HANAへのマイグレーション時にはまた検証や修正が必要になります。開発時の知見が残っていないケースも多く、すべてを1から確認するのは、非常に大きな労力を必要とします。

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SAP HANAアドオン開発のリスクを回避するには?

SAP HANAアドオン開発のリスクについてご説明してきましたが、ではこれらを回避するためにはどのような手法が有るでしょうか。

必ず必要なのが、PJ全体で「アドオン開発はリスク要因である」といった認識を持ち、安易にアドオン開発を行わないことです。

具体的には、初期の構想段階において「アドオン開発の審議プロセス」を設定するというのがまず考えられます。アドオン開発の必要性と考えられるコストについて明確な基準を設け、審議プロセスを通過していないアドオン開発は許可しないという形式を取ります。

単に基準として機能するだけでなく、この基準をPJキックオフ時に広く共有することで、「アドオン開発はリスクのある選択肢であり、安易な解決方法としてはいけない」といった認識を関係者間で共有することが出来ます。そうすれば、その後の業務プロセスを決めていくフェイズにおいても、より建設的な議論が出来ることが期待できるでしょう。

また、特に大きな問題であるマイグレーション時の検証工数については、近年注目されつつある自動テストサービスを活用する、というのも有力な手段です。パソナテックでは、SAP S/4HANAマイグレーション時の自動テストサービスを提供しています。詳細は下記にございますので、ご参照頂ければ幸いです。SAPテスト

まとめ

以上、SAP HANAのアドオン開発とそのリスクについてご説明してきました。

アドオン開発についてネガティブな記載になってしまったかもしれませんが、アドオン開発自体はお客様の大きな助けとなりえる、非常に有力な手段であることは間違いありません。重要なのは、それを安易に用いない、濫用しないという点です。

この記事がアドオン開発を適切に行う一助となることが出来れば幸いです。

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