めまぐるしくIT技術が発展している中、SAPを取り巻く環境も劇的に変化しています。特にシステムのクラウド化やマルチプラットフォームでの活用など、他の製品やサービスで利用されている技術がSAPに活用されつつあります。そのような中、SAP Fiori Cloud Platform (フィオーリ クラウドプラットフォーム) が注目されています。しかしながら、より便利な技術はより複雑なものです。今回は、SAP Fiori Cloud Platformの技術について解説し、活用の可能性を考えていきます。
SAP Fiori (フィオーリ)とは?
一貫性、インテリジェンス、統合といったキーワードで説明されるSAPの新しいGUIです。スマホやタブレットなどのモバイル環境にも対応し、シンプルかつ効率的に業務を行うことができます。それでは、それぞれのキーワードを見ていきましょう。
SAP Fiori:一貫性
一貫性とは、製品全体で統一されたデザインのことです。デザインには、フォント、色合い、テーマなどが含まれます。わかりやすいアイコン、読みやすいフォント、シンプルな操作で業務が行えます。また、PCやタブレット、スマートフォンでも、統一感のある見た目であるため、業務効率を向上させます。
SAP Fiori:インテリジェンス
インテリジェンスとはユーザに対して関連のあるコンテンツをポップアップで表示したり、デジタルアシスタント(AI)を利用したりといったことです。これにより、ユーザにとってより使いやすいUIとなります。
SAP Fiori:統合
統合とは、様々な製品を一か所に集めることです。SAP S/4HANA(エスフォー ハナ)やSAP Ariba(アリバ)、SAP Analytics Cloud(アナリティクス クラウド) などの製品を簡単に呼び出せるようになります。また、すでにSAP ERP 6.0や、SAP SRM 7.0を利用している場合は、接続設定やユーザーロール設定を行うだけですぐにSAP Fioriを利用することができます。
上記の特徴により、実際に利用しているユーザからは、「従業員の生産性や満足度の向上」や「作業時間の短縮」などが報告されているようです。
(https://www.sapjp.com/blog/archives/3711 より)
SAP Fiori Cloud Platform (フィオーリ クラウドプラットフォーム) とは?
SAP Cloud Platformは、SAP Business Technology Platform(ビジネステクノロジー プラットフォーム)の機能の一部という扱いになりました(https://www.sap.com/japan/products/cloud-platform.html )。しかしながら、SAP Cloud PlatformはSAP Business Technology Platformの中核を担う重要な技術です。SAP Cloud PlatformはSAP Business Technology Platformの中でアプリケーション開発やアプリケーション統合といった部分を担っています。それでは、SAP Cloud Platformの役割と、SAP Cloud PlatformとSAP Fioriを組み合わせたSAP Fiori Cloud Platformについて解説していきます。
SAP Cloud Platform:アプリケーション開発
SAP Extension Suiteと呼ばれるサービスによって、SAPアプリケーションをより早く、よりシンプルに、そして、より価値のあるものすることができます。例えば、同じような作業は自動化ツールを利用する、ローコード環境を採用することにより、開発コストの削減と開発アプリを容易に管理できる、などといったことが可能になります。
SAP Cloud Platform:アプリケーション統合
SAP Integration Suiteと呼ばれるサービスによって、オンプレミスやクラウドベースのアプリケーションやプロセスと、SAPのツールやコンテンツと統合して利用できることが可能になります。例えば、SAPの他のソリューションであるSAP S/4HANAやSAP Aribaはもちろんのこと、すでに使っているCRMやメール、eコマース(EC)とも連携することができます。
SAP Fiori Cloud Platformとは
前見出しで説明したSAP Fioriと本見出しのSAP Cloud Platformを組み合わせたものがSAP Fiori Cloud Platformです。効率的なGUIであるSAP Fioriと他のアプリケーションとの連携や独自のアプリ開発などの強みを持つSAP Cloud Platformを利用することにより、生産性の向上や作業時間短縮が可能となります。それでは、SAP Fiori Cloud Platformを活用すると具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。もう少し掘り下げて考えてみます。
SAP Fiori Cloud Platform 活用の可能性
それでは、上記の内容も踏まえて、SAP Fiori Cloud Platformの活用イメージについて考えていきます。
1.様々なサービスと接続する
最近では、サードパーティ製のアプリケーションを利用することも珍しくありません。例えば、業務によって、クラウド上にあるアプリケーションを利用していたり、オンプレミス環境にあるアプリケーションを利用していたりです。しかし、SAP Fiori Cloud Platformを利用することで、クラウド上のアプリケーションやオンプレミスで用意したアプリケーションと簡単に連携することができます。
2.維持費の削減
クラウド上のサービスを利用することで、サーバの維持費用や保守費用を削減することができます。例えば、専用のサーバを資産として保有する必要がなくなったり、自社で保守体制を用意する必要がなくなったりします。
3.セキュリティ対策をユーザが行う必要はない
顧客情報流出などのニュースが飛び交う中、企業の情報セキュリティ対策という責任はますます追及されています。そのような中、クラウド上にあるSAP Fiori Cloud Platformを利用することにより、クラウド上のセキュリティを任せることができるのは大きなメリットだと考えます。
4.単純作業の自動化
RPA(Robotics Process Automation)という言葉が出てきてからそれなりの日が経ったのではないでしょうか。プロセス, 業務の自動化をRPAで行うという流れはSAPにも来ています。SAPアプリケーション専用に構築されたRPAを用いることにより、業務の自動化をすばやく、簡素に行えます。
上記のような特長を持つSAP Fiori Cloud Platformですが、このような特徴を生かしてどのようなソリューションが生み出されているのでしょうか?もう少し具体例を出しながら解説します。
具体例1:請求書の自動登録
PDFの請求書からOCR(Optical Character Recognition/Reader)と連携し、テキストデータを読み取ります。そのテキストデータを元に請求書を自動で登録するようなソリューションです。人の手を介さないことで、ヒューマンエラーを回避し、コストを削減します。
具体例2:機械学習を利用した予兆保全
現場のマシン(IoT機器)から吸い上げたデータを学習し、故障や不具合を予想することができます(予兆保全)。また、予想するだけでなく、部品の発注など、故障に対するプロセスの自動化が可能です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?SAP Fiori Cloud Platform活用の可能性についてのポイントは以下の通りです。
- SAP Fioriとは、SAP製品を操作するGUIです。
- SAP Cloud PlatformはSAP Business Technology Platformの一部であり、他のアプリケーションとの連携や独自のアプリ開発などの強みを持ちます。
- SAP Fiori Cloud PlatformはSAP FioriとSAP Cloud Platform(SAP Business Technology Platform)を組み合わせたものです。
- SAP Fiori Cloud Platformの強みは他のアプリケーションの連携、コスト削減、自動化など、たくさんのメリットがあります。
Fiori Cloud Platformでできることや活用イメージを持つことができれば幸いです。
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